稲城市発達支援センター「レスポーいなぎ」見学
8月上旬、東村山市議会の大塚恵美子議員と稲城市の発達支援センター「レスポーいなぎ」を見学させて頂きました。現地では、センター長さんが説明してくださいました。その報告と感想です。
【沿革】
市の障害支援課職員だった方が、福祉と教育の連携と切れ目のない支援が必要という思いから、発達支援センターの設立を公約に掲げて市長に当選。社会福祉法人「正夢の会」が受託して、2013年4月に「レスポーいなぎ」開設。
【特色】
- 建物は小学校の跡地を利用し、教育相談室と同じフロアで連携をはかる。
- 正職員はセンター長と臨床心理士の2名。
- 市長の意向であえて療育事業はしていない。人口8万5千と規模の小さな市なので、大がかりな事業を立ちあげるより、アウトリーチ型の支援方法を採っている。児童発達支援やデイサービスは市内のNPOが担い、レスポーいなぎは保護者のケアを優先的に行う。
- 個人サポートファイル「ぽわーる」の活用。幼児期から受けてきた支援の経過(縦軸)と、いま現在受けている支援(横軸)の情報を蓄積し、保護者と支援機関と園・学校が共有する。実際に利用されなければ意味がないので、保護者が記入するのが難しい場合は、支援機関が記入する。医療情報や、受けている福祉サービスの履歴、母子手帳、学校の通知表など、なんでも挟み込んでいく。
- 学校卒業後もフォローしていく。現在、1歳8カ月から65歳まで、相談を受けている。主訴で多いのは、
- 家庭での関わり方
- 園・学校での不適応
- 診断を受けるべきかという相談。
- 成人してはじめて発達の問題に気づいた当事者や家族には、本人の意志を尊重して、福祉サービスを利用したい場合に医療機関へつなぐ。診断の有無に関わらず、生活上の困り事を支援。
【稲城市の課題】
- 高機能児に対応できる事業所が少ない。サービスにつながれている知的障害を伴う子どもより、むしろボーダーや高機能の子どもの予後が心配。
- 家族同士の交流が少ない。きっかけ作りをどのように実現していくか。
- 家族に相談機関の情報が周知されていない。
建物は、廃校になった小学校をリフォームし、教育相談室と発達支援センター、シルバー人材センターなどが入った複合施設になっていました。レスポーいなぎと教育相談室の職員室は同じ部屋で、入口に職員さん手作りの掲示物が貼ってあり、やわらかい雰囲気作りがされていました。市内の特別支援学級と通級の地図も掲示してありました。
案内してくださったセンター長さんは、強度行動障害のある方の支援を長らくされていたそうで、日頃から当事者の考えを尊重した支援をなさっていることが、お話の端々からうかがえました。ほとんど毎日、外へ出かけて、保護者と園・学校と支援機関の関係作りに努めていらっしゃるようです。もうひとりの職員さんである臨床心理士さんと2名でフル稼働していらっしゃるのがわかりました。
先駆的な自治体では「切れ目のない支援」が当たり前になりつつあります。
センター長さん自身、縦割り行政が市民の福祉のデメリットになることは恒常的に感じていらっしゃったそうで、今年度から就学相談委員会メンバーになり、教育分野に入りこむ努力をされています。先駆的な自治体をモデルとするだけでなく、先駆的な実践をしている人材の登用も支援態勢を整えるためには有効というお話も伺いました。
「レスポーいなぎ」は、多額の費用をかけずにここまでできるというお手本だと思います。年間運営費についても伺いましたが、潤沢な予算がなくても、ひとつひとつ課題に向きあっていらっしゃると感じました。「箱モノに頼らず連携を模索し…」と、模索が長く続いている私達の自治体の関係所管の方々にも是非視察をお願いしたいです。(M.S.)