goodschooldays’s blog

発達障害があるために学校や日常生活で困っている子ども達を応援するための親の会です。 らっこの会 (東村山 困っている子ども達を応援する親の会)

ある発達障害児のスキー

靴は重いし、板が重くて邪魔。
そんなものを持って歩いたり、履いて歩いたり、出来ることならやりたくない。
だいたい、スキーなんて、めんどくさいし。


そんな思いを強烈に持っている子とスキーを楽しむためには、
「ちょっと先回り」が必要かもしれません。


ゲレンデにすぐに出られるとか、休憩できる場所が近くにあるとか、スキーに飽きた時に気分を変えられるアトラクション* のようなものがあるとか、足先に靴用ホカロンを入れておくとか。

* スノー・ラフティング、バンジージャンプなど



過保護に見えますよね?
重々承知しております。


けれど、いろいろチャレンジしてみて思い知りました。


「広汎性発達障害」という分かったような分からないような名前の発達の偏りをもつ彼の場合、親がある程度、先回りしておくことで、その活動を単なる「修行および苦行」にせず、「楽しい思い出、もしくは、またやってもいいなと思う活動」に出来る場合があります。


先回りし過ぎはもちろん好ましくないでしょう。
けれども、ただでさえ興味のないことには意識が向かないし、集中が続かない、
先のことが読めない、失敗を病的に恐れる、パニックになるとTPO(わきまえるべき時や場所)がふっとぶ、そういう傾向のある子どもとは、何をするのも簡単ではないです。


そうわかっているつもりでも、母は日々失敗を重ね、そのたびに学びます。


嫌で嫌で仕方ない彼をその気にさせて、靴をはかせ、板をはかせ、ストックを持たせ、
そこまでで実は既に結構疲れたりするのですが、
なだらかな斜面に連れて行き、ボーゲンでレッツゴー。
いい塩梅です。


そこで親として欲が出ました。


「多少冒険することも必要ではないか? 彼も友達と一緒に滑りたいだろう」と思ってしまい、決して「なだらか」とは言い難い斜面に連れて行ってしまったばっかりに、彼は号泣、絶叫、罵りの、「ネヴァーエンディング」に見えるパニック状態に陥りました。


「しまった」と思いつつ、本人が自力でどうにかする気になるまで待つしかない。


「こんなところを降りたら死ぬ!パトロール隊を呼べ!こんな意地悪をして何が楽しーの!!」と大騒ぎする彼。


通りがかりの皆さんは「あら、怖がり屋のぼっちゃんね」というような笑みをこちらに投げかけます。こちらも「ええ、まあそんなもんです」というような曖昧な笑みを返してみたり。


ずいぶん時間をかけて、泣きながら、後ろ向きで這い降りたり、お尻で滑ったりしながら、なんとかなだらかなところまで降りてぐったり。

「新幹線でもバスでも飛行機でもなんでもいいから帰る!」という彼には取り合わず、気分転換後、再度スキー。


その後、キッズ用ゲレンデという名前に騙されて連れて行った斜面が、再度、彼のパニックを誘発してくれました。号泣そして罵倒。


そのあとは、スキーに連れて行った親を呪うような言葉の数々を浴び、ぐったり疲れ、それでも平常心に戻って帰宅。


そこまでで済まなかったところが、やはり難しい点であると母は改めて学びます。
自宅で、怖かった斜面の記憶がよみがえったようで、再びパニック。
引きずるんですね、怖かった記憶。辛かった記憶。
そういう記憶を消去したり忘却する力を、鍛えられるものなら、鍛えたいものですが。


「スモールステップ」で達成感を重ね、自己肯定感を引き上げる。


なんて、何度も机上で学習していても、現実の生活の中では失敗ばかり。

らっこ会の保護者の皆さんも、これに近い経験をたくさんお持ちでしょう。


スキーしなくても良かったんじゃないか。
確かにそうかもしれないんですが。

「今度は無理しないでやろうよ。また行こうね。」という誘いに、
「うん」と答える彼は、やっぱり先のことが読みにくい傾向があるのか、
それとも、めでたく忘却力が上がってきたのか、そこのところは謎です。